≪天一号作戦≫

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 ある者は馴染みの料亭に顔を出し、ある者は故郷の家族へと便りを送り、またある者は出撃前の晩餐を楽しんだ。  百合子の父、梅太郎も例外ではなかった。  彼もまた、一日しかない貴重な休暇を帰省して、家族と共に過ごしたのである。  今、梅太郎はその休暇を終え、自らが乗艦する戦艦大和へと戻って来た。  戻るなり、梅太郎は自分が受け持つ左舷艦橋脇の機銃座へと上がった。  ここから望む大和の艦橋は、その洗練されたデザインもさる事ながら、只々圧巻の眺めである。  梅太郎が、大和へ配属となって三年以上が経つ。  やはり、長年配属され続けた部署が、彼にとって、艦内で一番落ち着ける場所なのだろう。 「あ、班長!お戻りになられたのでありますか?」  どうやら、先客がいたようだ。  声の主は、丹念に機銃の手入れをしていたらしく、ハッチを開け顔をのぞかせた梅太郎に気付き、振り返りほほえんでみせた。 「精が出るのぉ!大石」  男は、同じ部署で梅太郎の部下でもある大石丈太郎二等兵曹だった。 「大石、お前は入湯上陸をせんかったんか?」  梅太郎が尋ねると、何ともバツが悪そうに大石は答えた。
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