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あまりにも唐突に告げられ、頭の回転が追い着かない。
私の両親はずっと共働きだったこともあり、家では小さい頃から一人ぼっちで過ごすことが多かった。
だけど、それを寂しいと思ったことはない。
それは、幼馴染の千葉圭祐(ちばけいすけ)と田島綾太(たじまりょうた)が、いつも私の傍にいてくれたからだ。
私にとって二人は、かけがえのない存在だった。
「……急に、どうして?」
《どうしてって、何言ってるのよ。
もうすぐ、圭祐君の一周忌でしょう?》
ガサッ。
母の言葉に、改めて現実を突きつけられた。
ガツン、と鈍器で頭を殴られたような、強い目眩すらしてくる。
あっという間のようで、しかしとても長くつらい一年間。
あの悪夢のような日から、もう一年という月日が過ぎ去っていた。
母の一言がすんなりと入り込んできて、すとんと心の中央に落ちてくる。
それはとても大きく、深い影を心の中へと作り出す。
この一年間薄れることなく私の中心に居座り続けたそれは、この夏再び勢いを取り戻して体のすべてを侵食し始めていた。
《ちょっと、美羽?
まさか、こんな大事なこと忘れてた訳じゃ―――》
「忘れる訳ないでしょ。
……だから、その名前は出さないで」
思っていたよりもずっと、絞り出した声は小さく震えていた。
それに気付いていたのか、母はそれ以上何も言わずに電話を切った。
再び静けさの戻る、薄暗いあぜ道。
その中で、一人ぽつんと立ち尽くす。
ガサッ。
なんだか、さっきから鳴っているコンビニの袋の音が、やけに耳障りだった。
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