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―――小学一年生の夏休み。
私は、この町へ引っ越してきた。
引っ越すと言っても、親戚がこちらで暮らしていたのがきっかけだった。
あまり金銭面で余裕のなかった我が家は、ほぼ無償で済む場所を提供してもらえるこの町へ、藁にも縋る思いで転がり込んで来たのだ。
「……本当に大丈夫か、美羽?」
「うんっ、大丈夫だよっ!」
不安そうに何度も確認してくる父に、ぶんぶん頷いて答える。
そんな私の様子を、母は嬉しそうに見つめていた。
「いいじゃない。
子供のうちは、冒険心をくすぐられるのよ、この町は」
「……じゃあ、ちょっとだけだぞ」
暗くなる前には必ず帰ること、と指切りをして、父は渋々私を送り出してくれた。
私はルンルン気分でスキップしながら、新しく暮らすことになった町を探検し始めた。
初めて見る自然たっぷりの世界に、私は母の言う通り冒険心がくすぐられ、至るところを散策して回った。
家の近所のあぜ道から、緩やかな坂を上り、徐々に気が鬱蒼とした山の方へと登っていく。
その中に流れる、キラキラと輝く涼しげなせせらぎを見つけ、思わず感嘆の声を漏らした。
「わあぁ……すごい、きれー……」
川を流れる清流は太陽の日に反射して眩しい煌めきを放ち、耳に心地よい音色を奏でながら静かに流れていく。
水は何処までも澄み渡り、川底がすっかり見えてしまうほど綺麗だ。
その美しさに思わず見惚れ、つい手を伸ばした時―――。
「ひゃっ!?」
私は足を滑らせ、真っ逆さまに川の中へ転落した。
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