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「……っ」
「圭祐、この子もしかして、瀬戸内(せとうち)のおばさんとこの子じゃない?
ほら、この間姪が来るって言ってたじゃん」
「あぁー、そーいやそうだったなー。
綾太は記憶力いいな、本当」
未だにぷるぷると震えている私をよそに、二人は些細な推理を繰り広げていた。
そして視線を私に向けたかと思うと、圭祐と呼ばれた茶髪の男の子は私の目の前にしゃがみ込んで、すっと背中を向けてきた。
「ほら、おぶってやるから、乗れ。
仕方ないから、おばさん家まで送ってやるよ」
「や……でも、濡れちゃう……っ」
「いいってそんなの、気にすんなって。
ほら、いいから乗れ!」
「で、でも……っ」
小さくかぶりを振る私に、今度は綾太と呼ばれた黒髪の男の子がしゃがんで視線を合わせてくる。
彼は淡々として落ち着いた表情で、じっと私の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫だよ、気にしなくても。
とりあえず、こんなところに置いてく訳にはいかないから」
「……」
「確かにこいつにおぶられるのは、不安かもしれないけど、いざという時は俺が後ろで支えるから、大丈夫」
「ちょ、失礼な奴だな!? 俺の足腰なめんなよ!?」
ぶーぶー文句を言う圭祐に、思わず吹き出してしまう私。
それを見て、綾太は彼の背中に乗るようにとやんわり促した。
大人しくおぶられた私と共に、二人は町の方へと歩き出す。
ちらりと足元に視線を落としてみたが、河原は足場が悪く、デコボコとしていてとても歩きにくそうだった。
申し訳なさと不安で思わずしがみつく彼の服を強く握り締めると、後ろから静かな声が聞こえてきた。
「圭祐、足元悪いから気を付けて。
お前がコケたら、その子も道連れなんだから」
「分かってるっての!
お前はホント、いちいちうるさ…―――うわぁっ!?」
「…おっと」
ぐらり、とバランスを崩し傾いた彼は、私を支えていた手を放してそのまま川へと転落した。
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