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「美羽ちゃん、少し見ないうちに痩せたかしら?」
圭祐の一周忌。
きっちりと制服に身を包んだ私を見て、圭祐のお母さんが僅かに目を細めた。
そう言うおばさんの方が、ずっとやつれたように見えるし、事実問題前と比べるとかなり痩せていると思う。
それはもう、痛々しくて見ていられないほどにひどい疲弊様だった。
力なく笑う目元は赤く腫れて、また泣いたのだろうとすぐに察しがつく。
おじさんは、そんなおばさんの隣に寄り添うだけ。
下手な言葉はいらない、そんな夫婦の絆が垣間見えた気がした。
誰よりも息子を愛していた二人から、圭祐を奪ってしまったのだ。
本当なら私は、二人に会わす顔などありはしない。
「もう、しっかり食べなきゃ駄目よ?
今の年頃は、身体を作る大事な時期なんだから。
ちゃんと食べないと、美羽ちゃんはただでさえ細いのに、もっとガリガリになっちゃうわよ?」
まるで実の娘に言い聞かせるように優しく諭してくれるおばさんに、思わずじわりと涙が込み上げてきた。
だけど、泣くなんてことは許されない。
圭祐を二人から、この町の皆から奪った私が、泣くことを許される訳がなかった。
それなのにおばさんは、優しい眼差しで私を見つめてくれる。
「ほら、顎の辺りとか、すごくスッキリしちゃって。
女の子は、少しくらいふくよかな方が、可愛くてモテるのよ?」
「……おば、さ……っ」
「美羽」
名前を呼ばれて、勢いよく振り返る。
其処には、無表情で立っている綾太の姿があった。
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