第1話

成行

　離婚の理由は、私が重荷になったから。結婚して一年後、私は心の病を発症する。人が何か言い知れぬ恐怖に感じ、誰も信じられなくなった。

　ただ、それだけ。元夫やその父、実の両親にも、ただの適応障害だと伝えた。しかも軽い症状だと私は笑う。小さな嘘や誤魔化しが、蓄積されて起こった事態を隠した。

　夫に嫌われたくない。義父に疎まれたくない。両親を安心させてあげたい。全ては人の為に、私の思考は巡る。

　全てを上手く立ち回ろうとすればするほど、私の心は壊れていく。

　毎日家中に響く、如何わしいネット動画の音声。義父の趣味である、それを止めてくれとは言えなかった。ずっと、一日中それを観ている……馬鹿なんじゃないか。嫁にもう少し気を遣っても罰は当たらないだろう。

　毎夜営みをせがむ夫。よくもまぁ飽きもせず、仕事で疲れているだろうに御苦労様なことで。私もパート勤めをしていた。気分が乗らない、と断ると不機嫌になる。親子揃って馬鹿なんじゃないか。

　特にそちら方面で彼等に違和感を覚えつつ、その家に入ってしまった者の使命は我慢だ。