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「だけど、ありがとう。
これでお見合いしろなんて
言われなくて済むかもだから
このまま勘違いさせておこうかな」
ニコッと笑って歩き始めた
美杏の手をすかさず
また掴んだ俺。
驚いて振り返る美杏。
ドクンドクンと波打つ胸。
穏やかに流れる香港の風と
ふたりを包む初夏の光。
…男ならここで言わんと。
覚悟決めんか俺!
「あのな、美杏。
俺…お前の事が
めっちゃ気になっとる」
よし!言うたぞ俺!
無言のまま顔を赤らめる美杏。
瞳を揺らして次の言葉を
待っている彼女に質問を
投げかけた。
「お前も俺の事が
気になっとると思ったんやけど
それもえらい勘違い野郎か?」
その質問にも赤い顔のまま
視線を泳がす美杏に
ドキドキしながらも
彼女の答えを待つ。
…どっちやねん。
はよ答えんかい美杏。
無言のまま俯く彼女に
若干イライラしながら
掴んだ手をぎゅっと握りしめた時
ようやく美杏が口を開いた。
「そんな…簡単に消せないから」
「は?」
「小野部長への気持ち…。
だから…まだ…無理」
…せやろな。
やっぱ美杏は今でも
小野部長が好きなんやし
当然の答えやわ。
そう思いながら肩を落とした俺に
また可愛らしい笑みを見せて
美杏は言った。
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