素直になれなくて

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美杏がうちのおかんのために 選んでくれたのは、 パシュミナのストールやった。 「香港はフリーポートだから 質の高いパシュミナが手頃な お値段で手に入るのよ。 日本ではウールとかカシミアって 呼んでるけど、ホラ触ってみて」 美杏に言われた通りストールを 触ってみたら、 確かに上等なカシミアや。 「お母さんって明るい色好き?」 「おお、浪花のおばちゃんやからな。 赤の靴下とか平気で履くで」 その返事に美杏はクスッと笑って 色とりどりのストールの中から オレンジ色のストールを手に取った。 「オレンジってね、 充実感とかエネルギーを 呼び起こす色なんだって。 橋本のお母さんに いつまでも元気でいて欲しいって 思いを込めて、この色でどうかな?」 微笑みながら言った美杏に 俺のラブメーターが MAXまで振り切りそうな勢いで グングン上がって行く。 「さすがデザイナーやな。 色ひとつにもそんな理由が あるなんて思いもせんかったわ」 「褒めても何も出ないわよ」 相変らず口は減らんけど。 やっぱ美杏ってエエ女やん。 そう思いながら俺は オレンジ色のストールと 薄いピンクのストールを 手に取った。
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