素直になれなくて

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…それって… 「…また来てもええのん?」 その質問に美杏はプイッと 顔を背けやがった。 …なんやねん。 やっぱ訳分からんわ、この女。 せやけど… 美杏も俺の事は まんざらでもないって事やろか? そう感じながらじっと 美杏を見つめていると 何か焦り出したように 美杏は視線を遊ばせながら 俺に声を掛けて来た。 「時間ないから次に行くわよ」 クルリと背中を向けて 歩き出そうとした美杏の手を ガシッと掴みながら ついつい口角を上げてしもた。 「ひいっ!」 まるで悲鳴でも上げたかのように 肩をビクリとさせた美杏が 振り返ったその姿に またムクムクと湧き上がる …俺の悪い癖。 「なっ…何よっ!」 「もういっぺん聞くで。 また香港に来てもええのか? 昨日はもう二度と来るなって 言いよったやんか」 掴まれた腕もそのままに 微かに顔を赤くした美杏は 視線を背けたまま唇を噛む。 …素直やないなこの女。 お前も俺を意識しとんやないか? そう思ったらますます 虐めてやりたくなる。 「なぁ美杏。 ええんやろ? …またお前に会いに来ても」 微笑みながら覗き込んだ 美杏の瞳がゆらりと揺れた。 …やっぱそうや。 美杏も俺をめっちゃ 意識しとるんやないか。 そう確信したのに。
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