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「来なくていいから」
「はぁっ?」
「アンタ本当に最低ね。
そうやって何人の女を
口説いて来たのよ」
「はぁぁぁっ?」
「私は騙されたりなんか
しないんだからね!」
ムッカー!
ホンマにコイツ可愛くないわ!
「アホか!
その気もない女口説くほど
俺は好き者ちゃうで!」
ついムキになって
言い返してしまった瞬間、
一気に美杏の顔が
赤く染まって行く。
…え?
……あれ??
…俺、今なんて言うた?
お互いが唖然としたまま
だけど掴んだ腕を離せないまま。
俺と美杏の間には
初夏の香港の風がさわさわと
流れて行く。
「…あ…れ…?」
この場をどうしていいものか
ポツリと言葉を出しかけた時
美杏のバッグの中で
携帯が鳴り出した。
その音にビックリして
咄嗟に離してしまった美杏の腕。
慌ててバッグから携帯を
取り出した美杏が画面を見つめて
ひとつため息を吐き出した。
「ちょっとゴメン」
俺に小さく頭を下げてから
背中を向けた美杏は
携帯を耳にあてる。
自分で吐いてしまった言葉に
落ち着きを失くしながらも
彼女の電話の相手が
誰なのかしっかり耳を傾ける。
…ホンマにアホやわ俺。
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