十三夜

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すれ違う神官たちがこっちを見るなり血相を変えて後ずさる。 言われなくてもわかってる。今の自分がどんなカオをしてるか。 何であんなのが神官長なんだ……! 全身の血が沸騰して煮えくり返っているみたいだ。 「あ~ムシャクシャする!」 最悪の朝だ、まったく! 早朝の爽やかな空気も小鳥のさえずる軽やかな声も、もはや私の周りには存在しない。 大股で自分の部屋へとズンズン進んでいると、私を避ける神官や女官たちのただ中で平然と歩いてくる人物が向こうからひとり。 「ライア! いいトコに!」 「プリュエス、どうされました?」 「何でもいいから、いらなくなった食器とか花瓶とか今すぐ持ってきて!」 「何ですか、いきなり。どうなさるんです」 「決まってんでしょ! 神官長だと思って、投げ飛ばして叩き割って粉々に踏み潰してやる!」 「おやめください。どれだけ私たちの仕事を増やすつもりですか」 「文句だったら神官長に言えー!」 「はいはい、どうどう」 「私は馬か!」 一通り叫ぶと、少し気が晴れた。あー、でもでも、神官長への怒りはこんなもんじゃちっとも軽減されない。 そうだ。怒りに任せて忘れていたけど。 「ライア、昨日はごめん」 「またいきなり何です」 「いや、昨日私のせいで大変だったみたいだし」 「あぁ……」 私の殊勝な言葉に、けれどライアはおもむろに目を逸らす。 何だろこの態度。ライアにしちゃ珍しい。ヘンだな。
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