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「よし。赤いドレスの女!こっちにこい!人質と交換だ」
「…」
メリエルは静かに男たちの所へ歩いて行く。
その時。
「ぐっ…」
男の一人が苦しげな声を上げて倒れた。
そこにいたのは銀髪の青年。
碧色の瞳が妖しく光る。
「…ダメだなー。オッサン達。気配くらい読めよ。」
そう言いながらも拳銃の撃鉄を起こそうした男の首に手刀を下ろした。青年はまるで瞬間移動でもしているように動きが早く、気配も無い。
「!…お前は【童顔の死神(ベビーフェイス・デス)】…」
「ラスト」
メリエルを人質にとろうとした男は青年による溝尾への拳の叩き込みによってあっけなく倒れた。
「大丈夫?」
青年は転んで起き上がれないメリエルに手を差しのべた。
後で「あそこで殺しときゃ良かった」と後悔することになるのも知らずに。
「…超人的なまでの運動能力…近接格闘は完璧…」
「あ?」
「決めた。私はお前が欲しい…ってか寄越せ」
メリエルは一人で立ち上がるなりそう言った。
「はあ!?」
遅れて青年は言う。メリエルはまるで混乱している青年を無視して続ける。
「私はメリエル・フォーリグ。【シリング・ウィズ社】の社長だ。是非ウチで働いて欲しい」
「…っはい?…ってちょっと待…うわああ!」
メリエルは華奢な姿からは想像できない圧倒的な力で有無を言わさず青年を引きずって出ていった。
「…」
残されたアレスタはまた始まったとため息をついてとりあえず自分に出来る事―――警察を呼んで混乱しきっているバーの指揮を執った。
「おい!この馬鹿力女!離せーっ!」
暴れる青年をヨソにメリエルは嬉しそうにしている。
「誰が離すか。私はお前みたいな奴を探してたんだ。死んでも離さん」
聞くだけならプロホーズだがこの状況を見てそう言う馬鹿はいない。
ふとメリエルの足が止まった。
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