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ピチャン…
音がした。
ハァッ…ハァッ…
荒い息が聞こえる。男は夜の倉庫街を走っていた。並びには何棟もの巨大な倉庫がある。だがそこは雨も降って居ないのに水音がする。だが男はそんなのに構っている暇あるかと音を無視した。
ガツッと何かにけつまづく。
「ひッ…うわあああっ!!」
つまづいたのはどうやら仲間の死体で月明かりに照らされたそれはまるでこちらを睨んでいるようだった。
男は転んだまま立てずに後退りした。
そこには息絶えた仲間の死体が狭い通路を埋めつくしていた。ナイフで胸を貫かれ、銃で頭を吹き飛ばされた仲間の死体。無惨にも首がひしゃげていたり、腕や足が千切れていて血が垂れ長し。
まさに血の海と化していた。
(に…逃げないと殺され…)
男はすぐさま背を向けて元来た道を走る。
(…は、早く…ここから逃げないとっ…)
男は走る。今や何も見えないようにひたすら無我夢中になって。
ゾクッ
背後に冷たい視線を感じた男はつと後ろを振り返った。
そこにいたのは――
まだ十代後半くらいの少年とも青年とも言えない子供。
「なんだガキか…」
アイツが来たと思ったら、ふぅ、ヒヤヒヤさせやがる。
だが男は気付かなかった。その少年の手に九ミリ経口小型拳銃が握られていたことに。
「おいガキ…そこを退け」
男は荒々しく少年に畳みかける。
「…」
しかし少年は動くどころかこちらを睨みつけている。
「ガキ、なんだその態度は―――」
男はその様子が気に入らなかったらしく少年の胸倉を掴んで
―――凍りついた。
「…」
少年が九ミリ経口小型拳銃を男の額につけていたから。
それだけではない。
少年はよく見ると全身血まみれでしかもそれが体は全く傷ついていないことから全て返り血だとわかる。
来ている衣服の色が分からなくなるまでの返り血を浴びて少年は口角を吊り上げて妖しく笑う。
「ガキで悪かったなぁ!?」
そう言って男を―――
蹴っ飛ばした。
「がっ…」
少年に蹴り飛ばされた男は勢い良く2メートルくらい先まで吹っ飛ぶ。
男は恐怖に駆られながらも立ち上がり逃げようとするが目の前は壁。
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