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つまり、行き止まり。
「…チ、チクショーッッ!!」
最後の抵抗らしく男は懐の拳銃を連射する。
少年は恐れる事なく男に近づいていく。
カチッ カチッ
少年が男の目の前に来た時にそのデタラメな銃声は止んだ。
代わりに響くは空の銃の引き金を引く音。
「あ…あ…!」
男はダラリと銃を下ろした。
少年が男の胸倉を掴む。
「残念だったな、この裏切り者。ついでに言っとくが俺はガキじゃない。こう見えても22だ」
冷酷な暗殺者は放心状態の男を睨みつけながら続ける。
「俺はお前と話すつもりなんかなかったが、お前は俺のタブーに触れた」
ゴリッと男の頭に銃を当てる。その時彼は男の手を離した。
「…」
「どうした?もうあの世に行く準備はでき―――」
言葉が途切れた。
彼の胸には深々とナイフが突き刺さっていた。
「…あ…?」
男は高らかに笑う。手が暗殺者から離れた時に腰に隠し持っていた小型ナイフをそのまま暗殺者の胸に突き刺したのだ。
だが―――
「どうした?」
暗殺者は笑う。
男は目を見開いて驚く。
「お、お前さっき死んだはずじゃ…」
「あ?…そりゃテメーの仲間の死体だ。よく見ろ、ボケナス」
男は暗殺者の言われた通りにそれを見た。それには胸にナイフが突き刺さっていたが、額に銃創がある。
男は恐怖した。
―――なんて奴だ。俺がナイフを手にした瞬間に近くの死体を持ってきて盾にするとは。
再び男の中に恐怖が生まれる。
「さてと…」
暗殺者はゆっくりと歩いてくる。
「俺は諦めの悪い奴はけっこう好きなんだ。ついでだから教えてやる。俺の名前はルイセント・ファグジェルド。まあ、教えても意味はないな。お前はここで死ぬから」
冷酷な暗殺者はひどく嬉しそうに笑う。
一発の銃声が闇夜に轟いた。
「…任務終了。今回は派手にやり過ぎちまったか?まぁ、しゃーねぇな。んじゃ、帰りますか」
暗殺者は姿を闇へと躍らせた。
「…今日は満月か。やけにキレーだな」
この1日後、運命の出会い(彼にとってはサイアクの出会い)があることは今の彼には予想すらできなかった――――
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