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30XX――イタリアのナポリ。
工業の発展から人口の増加によって地球の環境は悪化していった。その一方で人口は増加を続け、物価も上がっていった。そんな中、人々は生活していく為に闇へ身を堕とす者が増えた。そして始まる暗黒の時代――。マフィアや犯罪者がうろうろしている中で一般市民たちは街を歩くことさえままならなくなった。警察や警備隊では間に合わない、極度の人手不足。そこで多くの企業が立ち上がりこの状況を打開せんと新しい種の組織を作った。それはいわゆる傭兵サービス、危険なことを引き受けるなんでも屋だ。
その手のエリートを育成するためのアカデミーまで作られ、それは大々的に進んで人々は安心して再び街を歩くようになった―――。
「…か。」
業務用の椅子に座って彼女は呟いた。
ここはなんでも屋【シリング・ウィズ】社のオフィスの中の社長室。
彼女は18という若さでこの会社を立ち上げた。しかも普通では有り得ない方法で。
彼女はメリエル・フォーリグ、19歳。
アカデミーを首席で卒業した後、彼女は年老いた父の会社を継ぐ―――はずだった。だが彼女はそれを拒み、「自分で会社を作る」と言ってアカデミー時代の優秀な友人と自らスカウトした者を引き連れ家を出ていき、準備してあったのか僅か一ヶ月で会社を立ち上げた。最初は若いと舐められていたがすぐに優れた実績を残している。
彼女の父は有数の資産家で母も貴族と言う優秀なお家柄だった。だが派天荒過ぎた彼女にはそれが煩わしくて仕方がなかった。だから会社を立ち上げたのだと言う。そして明言通り会社を立ち上げ今やいくつもの依頼を請け負う企業として人々に認められようとしていた。それは彼女の才能とカリスマが引き寄せたものに違いない。
にも関わらず彼女はもの思いにふけっていた。
このへんでは珍しい艶のある長い黒髪とどこか妖しげな紫の瞳。整った顔、彼女の髪の色と同じスーツを身に纏った彼女は酷く大人びていて実年齢より上に見える。
「…はぁ」
メリエルは大きくため息をついた。
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