プロローグ

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 今から7年前のこと、当時小学生だった俺は、病弱でしょっちゅう入退院を繰り返していた。そのせいか、あまり学校にも行けず、外で遊ぶこともできなかった。  小学生の頃の思い出といえば、誰しも楽しかった思い出を浮かべることができるであろう。しかし、俺は違う。俺の思い出といえば、入院中に何度もされた点滴と、病室の窓から見える住宅地…… ……あぁ。そういえば、他にもあったか。あれは、思い出と呼べるような出来事ではないかもしれないが。 たしか、あれはようやく退院できた数日後のことだ。ちょうど夏休みが始まる時期だった。 母さんの姉が高島に住んでいた頃、母さんと二人で船に乗って行ったことがあった。(ちなみに、高島とは長崎県に所在する島である。)母さんの姉は結婚しておらず「独身を貫く!」と宣言するほどの女性で、母親とは正反対の性格の人だった。そんな叔母が、いきなり「結婚する!」と、両親(俺の祖父母にあたる人たち。)に宣言したらしい。長崎市内に住んでいる両親は突然の娘の宣言を信じることができず、娘が結婚詐欺にでもあっているんじゃないだろうかと心配し、自分たちの代わりに様子を見に行ってはくれないかと母さんに頼んだそうだ。 ……と、まぁ、こんな経緯で俺は母さんと高島へ行ったのだ。  高島に着くと、叔母が出迎えてくれた。叔母は俺の顔を見るなり「あら、見ない間にまた父親に似てきたんじゃない?」と、ふふ、と笑みを浮かべて母さんを見た。母さんは「そう?」と、困ったように笑うと俺の手を引っ張って歩き出した。 父親の話になると、いつも母さんは何も答えてくれない。何があったのかは知らない。俺が父親のことで知っていることは、仕事は東京でミュージシャンをしていたこと、よく酒を飲んでは二日酔いをしていたこと、お金にだらしのないこと……後は、仏壇に飾ってある写真ぐらいだ。 .
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