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叔母さんの家へ着くと、母さんと二人で話したいことがあるから外で遊ぶようにと言われ、俺は島を散策することになった。
しばらく歩くと、権現山公園という公園にたどり着いた。公園には、芝生の広場や、アスレチック場や展望台があった。俺は暑い中久しぶりに長距離を歩いて、へとへとになりながら展望台の階段を上る。
階段を上り終えると、さすがに疲れた俺はベンチを見つけるとすぐにそこへ腰掛けた。次から次へと汗が額から流れ落ち、ハンカチで汗を拭ってもあまり無意味だと気づいた俺は風にあたれば少しは汗も引くだろうと思い、ベンチから立ち上がった。手すりに手をつき、風がこないかと身を乗り出してみたが、なかなか涼しい風は吹かない。夏のじりじりとした生暖かい風と共に海水のベタベタした感じが肌にまとわりつくだけでたいして涼しくはなく、汗は一向に引かなかった。俺はなんだか虚しくなり、手すりの上に腕組みしその上に顎を乗せて「暑い」とダルそうな声を出して青々とした海へ視線を投げかけた。
「……海しか見えないじゃん」
と、ふてくされながら呟いていると、いきなり目隠しをされた。「うわっ?!」と、悲鳴に近い声を上げ、突然のことに驚いた俺は、その反動で足元がふらつき、地面に尻餅をついた。
「あーぁ。 君、大丈夫?」と、背後から現れたのは、平安時代の貴族の子供が着る水干(すいかん)と呼ばれる着物を身にまとった短髪の俺と同じ年ぐらいの少年だった。まったく、と少年が腕組みをして見る先には「ごめんごめん」と謝る別の少年が立っていた。その少年の服装も同じで、ただ違っていたのは天然パーマで毛先が少し縮れていたところだ。天然パーマの少年は、「ごめんね」と顔の前で手のひらを合わせて俺に謝るが、俺はただただ呆然としていた。そんな俺に、「そうだ!」と天然パーマの少年は何かを閃いたような表情を浮かべる。俺は「なんだよ!?」とたじろぐ。そんな俺に、天然パーマの少年はニッコリと笑う。
「お詫びに島を案内するよ! 行こう!」
そう言って、天然パーマの少年は俺の腕を引っぱって走り出した。その後ろを
「にーちゃん、走ったら転ぶってー!」と、短髪の少年がついてくる。
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