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二人に振り回されて、走ってばかりできついはずなのに、通り過ぎる周りの風景や海風や波の音を聞くと、全てが吹っ飛んでいく感じがして嫌な気はしなかった。
そして、運動公園らしき広場に着くと、早速三人でじゃんけんをし、鬼を決めた。初めに鬼になったのは、短髪の少年だった。俺と天然パーマの少年は二人でなるべく見つかりにくい場所を探して隠れることにした。俺はテニスコートの近くにある倉庫を見つけると「あそこは?」と指を差して天然パーマの少年に提案してみたが「あそこはダメ。すぐ見つかる」と断られる。「こっち」と、腕を引っぱられテニスコートから少し離れた所にある開けっ放しにされた柵の外に連れて行かれると、草が生い茂る地面に「かがんで」と俺の肩を掴んで座りこんだ。「ここなら大丈夫」と、自信満々に言う天然パーマの少年に俺は、もやもやとした気持ちになった。隠れる側としてはいいのだろうけど、探す側にはこれはわかりづらくてかえってみつけにくいのでは?と……
「……やっぱり、別の場所にしよう」
不安になった俺は、テニスコートの中に戻ろうと立ち上がる。そのとき「ダメ!!」と、強い力で手を引っぱられ、その反動で俺はよろめいた。なんだよ、と言いたげな顔で天然パーマの少年を見ようとしたとき「見ーつけたっ」と言う短髪の少年の声が聞こえた。
「えっ……なんで!?」
意外にもあっさりと見つけられてしまったことに、俺はひどく驚く。それに対し、短髪の少年は余裕の表情を見せ「さて、何故でしょう」とハニカミに近い笑顔を見せた。
少し悔しい思いもしながらも、二人と遊んでいると楽しくて時間を忘れる程だった。
その後のことは、記憶が飛んでいて憶えていない。気がついたら、俺はなぜか高島にある廃墟と化したアパートの前に立っていて、一緒にいたはずの少年たちもいつの間にかいなくなっていた。
あの少年たちは地元の子?俺は廃墟の前で何をしていたのか?
なんとも不思議な夏の出来事だった。
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