みゆき

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みゆき

「そ、その子は……」 「こんにちは! 遠藤美雪ですっ! 六歳です!」  美雪がやや緊張した笑顔ではきはきと応えた。  初めて叔母さんに会うから、ちゃんと挨拶してねと周子は美雪に言い聞かせていたのだった。  美雪はその通りに大きな声で自己紹介をしたのだ。 「エンドウミユキ……」  叔母の顔は真っ青だった。  口元はわなわなと震えていた。 「トミさん? 大丈夫ですか? どこか加減でも悪いんですか」  エプロンの女性は血相を変えて叔母のそばへ行き、背中をさすったりしている。  みゆき、まさかそんなはずは。  叔母はうめくようにそう言って、両手で顔を覆った。 「ごめんなさい。あの、驚かせてすいません。この子は私の娘で、お姉さんの遠藤シゲの孫になります。偶然なんです。偶然この名前をつけてしまったんです」 「美雪、悪いことした? 叔母さん病気なの?」  心配そうに美雪は周子の顔を見上げた。 「ママがびっくりさせてしまったの」  美雪の前に屈んで、周子は上手に挨拶できたねと笑顔で頭を撫ぜた。  そうしながら周子は自分を責めた。  同姓同名の同じ年頃の娘を連れてくるなんて、驚かせに来たようなものだ。  そんなことにも気がつかないなんて馬鹿だ。  だが叔母の動揺ぶりは異常にも思えた。  姉の子が亡くなったのはショックだったろうが、六十年経った今もなお、それを引きずっているというのはおかしい。  それほどまでに美雪は生き写しなのだろうか。 「高野の叔母さん、美雪ね、病気を治すの上手なの。お熱があるの? 冷たいタオルをおでこにのせるといいんだよ」  必死に叔母を気遣う言葉をかける美雪に、叔母はやや強張った顔を少し上げて美雪の方を向いた。 「美雪ちゃん? こっちへおいで」 「なあに、叔母さん」 「美雪ちゃんは良い子ねえ」  傍へ歩み寄った美雪の頭を、叔母は優しく撫ぜながら徐々に笑顔になった。  その顔は義母にそっくりだった。 「驚かせてしまって、本当にすいません」  周子は平謝りした。
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