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「死が怖くないなんてことはないのよ。誰だって死は怖いもの。でもね、諦めもあるの。まだまだだって思っていても体のどこかにガタが来るとね、どうしても気弱になるものよ」
「叔母ちゃん、死んじゃうの?」
お菓子を貰ってきた美雪が、周子の横に座り、眉を寄せて話に口を挟んだ。
「美雪、変なこといわないの!」
「だって」
「今は元気よ。でも、誰でもいつかは死んじゃうのよ」
「美雪も? ママも?」
「きっと、ずーっとずっと先の話だけどね」
「死ぬのいや」
「誰だって死ぬのは嫌なのよ。だから元気でいるために色んなことをするの」
「そうそう。好き嫌いばかりしていたら病気になるかも」
怖がる美雪に、周子はここぞとばかり叔母の言葉にそう付け加えた。
人参も?
と、顔をしかめて訊く美雪に、叔母は苦笑した。
美雪のおかげで場が明るくなった。
叔母は急須にお湯を注ぎながら、足が不自由になったときのことを話してくれた。
二年前に雪道で転倒して足を骨折し、三ヶ月ほど入院したのがきっかけだという。
入院中はトイレも一人ではままならず、辛かったと話してくれた。
今は室内であれば人の手を借りずに歩けるようになったとのことだった。
自分で動けなくなったとき、死も覚悟した。
だから、今はおまけの命なのと、叔母は笑って話したのだった。
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