~序章~黄昏に見惚れて

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 思えばここ数日、色んなことが彼と関係している気がした。 黄昏時の買い食いも快晴の空を見上げたのも、宇津木さん達との雑談も大上さんの部活への勧誘も。 美味しいだって驚きだって笑いだって…‥そう、この胸の高鳴りだって、ここ最近の私は彼を中心に日常を描いていたのだ。 考えが飛躍すぎだろうか。 だけれど。 「えっと、その…‥」 もし彼が、あの時声をかけてくれなかったら?…‥きっと誰もいない教室で今も溜め息をついていたかもしれない。 少しだけ色づいてきた日々に浮かれていた。だけど私からはまだ何も行動していない、ただ惰性で動いてるだけだ。 これからどうなるかなんて分からない、でもじっとして考えてばかりいても結果は得られない。 だから、そう。今この一瞬だけでも自分で思い立ってみようじゃないか。 「リコーダーで良ければ」 「…‥そりゃ斬新だな」 「あ、でも何か似合いそう」 ほんのちょっとだけ。
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