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「手長ザル!」
「知的ゴリラ!」
「頭良くてたくましいとかギャップ萌えだろがぁああ!」
「倍カケで気持ち悪いだけだ!」
一体誰が このカオスと化した事態の収集を治めるのだろう。
ストレス性の腹痛に悩まされた監督がピッチャー交代と宣言するのか。訝しげにマウンドを見つめる主審が没収試合にするのか。はたまた観客席から突如、不良集団がグラウンドへとなだれ込み強制終了となるのか。
「ねぇ、皆」
あるいは遅れてやって来た小さなサードが…‥
「は?」
「うん、リリィがね『テメーらこっち見ろ』だって」
何十メートルも先にいるレフトが声も無く黙らせる可能性だってあるのだ──というかコレが本命。
皆が皆、嫌な予感を頭に浮かべながらも一方向へと顔を向けた。
するとレフトの定位置に立っている人間は優しく微笑んでいたのだ。桜色の唇をほんのりと横に広げ、カッと照りつける太陽の下と濃い緑が生え揃う夏草の上で涼しげに。
ただ、笑う。
遠目からでも分かるその素敵な表情に。
マウンドの男達(サード以外)は旋律を覚えた。
蛇に睨まれた蛙なんて生易しいものではない。まるで大虎が目と鼻の先でグルルルゥと喉を鳴らして獲物を品定めするかの如き威圧が彼らを襲っていたのだ。
そんな熱烈な視線は次第に、いがみ合うバッテリー間に集中し始めた。それに気づいた内野陣はレフトが見やすいように後ろへと下がり視界から外れる。
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