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「よし、やることは決まったなオメーら」
「……ケッ」
「何そっぽ向いてんだ猿! いいか三番の安打野郎はファーボール覚悟でくさいとこ投げるぞ。勝負は四番からだ、とにかく強振が多い典型的な奴だから坂田は覚悟しといてくれ」
「はいよー」
サードはニコリと笑いながら頷いた。
「加藤、鈴木、ランナー走っても気にすんな。とにかく前傾守備でぶつけるつもりで俺に投げてこい」
「分かってるよ」
「もとよりそのつもりだから」
ショートとセカンドが意気を投合させ声を重ねる。
「栗ちゃんは内野の連携を」
「心配すんな、好美はバッターにだけ集中してくれ」
皆から一目置かれているファーストは深く頷いて了承した。
「ってか、集中しなきゃいけないのはむしろ」
「コッチの方…‥だよなぁ」
「エース見ながら溜め息つくんじゃねぇ! 見てろよこっからはバットにかすりもさせねえから、ワハハ」
一際大きな声と共に鼻息をムフーと荒くした。
「はい解散」
捕手の言葉を皮切りに、内野陣は投手の頭をグローブで叩く。ボスン、バス、バシ、ベシリ、乾いた音が言っている『勝つぞ』と。
そして少年達はそれぞれの持ち場へと走っていった。
「ったく、扱いが雑すぎんだよ」
投手の言葉に誰も振り返らない。
マウンドに残ったのは投手と捕手と伝令役の選手のみとなった。
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