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「いいか、自分のスペックを見誤んじゃ
ねーぞ」
捕手は睨むような目つきで投手の胸にミットをぶつける。
仲間の誰よりも力強く。
「お前は揺さぶってなんぼのピッチャーなんだからな。天変地異が起こっても速球派にはなれねぇ」
「なあ、それ今言うことか? 俺のモチベーションだだ下がりなんだけど」
「ふん」
どこか不満を感じる受け答えだが、流石にタイム中といえど時間もたち過ぎているため捕手は渋みを帯びた顔でその場を去っていく。
「お前は速球派には絶対なれーん!」
「二度も言うな若ゴリラ!」
また一人去り、残るは小さくて生意気そうな少年と小さくて気が優しそうな少年の二人となった。
「なあ、今方々に散っていったのは本当に味方か? 最後の霊長類なんか敵意むき出しだったぞ」
「心配しないで、僕はたっちゃんのこと大好きだよ!」
「心の底から気持ち悪いわ」
「へへ…‥あ、もちろんリリィもだよ」
唐突に女の子の名前を上げられ投手は、さも嫌そうに舌を出していた。
「うへぇ、一番ありえないこと妄想すんのな」
「えー、そんなことないよ」
この頃、性別なんて物は差ほど重要ではなかった。
ただ単純に『仲間』という 言葉を共有して、純粋に遊ぶことに夢中で。
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