27人が本棚に入れています
本棚に追加
見事と言うべき青空を見上げた後。
投手は斜め後ろを振り向きレフトの少女と自然と目を合わせた。
深く被った野球帽の下で笑い、チャームポイントの片八重歯を見せるその姿は実に見目麗しい。
──ぶちかませ。
まるで、そう言ってるかのように瞳は臆することなく光輝いていた。この少女もまた選ばれたナインの一人だということだ。
「…‥おっかねぇ女」
そして、涼しげに笑い返した少年は覚悟を決めた。
──知っている。
人一倍…‥いや、人の十倍は負けず嫌いのあの少女ならば、どんな鋭い打球が襲っても見事さばくことができることを。
なにがあっても、どんな時でも、その結果失敗しても自らの力で立ち向かえることを。
だからこそ投手は遊ぶ。
怖いもの知らずの頼もしい存在が後ろにいるからこそ、この瞬間を心置きなく──。
自分の生き方に恥じぬよう。
「そんじゃま、いっちょやりますか」
そう、まずは一つ。
笑って鼻歌でも歌ってみようか。
最初のコメントを投稿しよう!