君と羊と青

11/20
前へ
/67ページ
次へ
見事と言うべき青空を見上げた後。 投手は斜め後ろを振り向きレフトの少女と自然と目を合わせた。 深く被った野球帽の下で笑い、チャームポイントの片八重歯を見せるその姿は実に見目麗しい。 ──ぶちかませ。 まるで、そう言ってるかのように瞳は臆することなく光輝いていた。この少女もまた選ばれたナインの一人だということだ。 「…‥おっかねぇ女」 そして、涼しげに笑い返した少年は覚悟を決めた。 ──知っている。 人一倍…‥いや、人の十倍は負けず嫌いのあの少女ならば、どんな鋭い打球が襲っても見事さばくことができることを。 なにがあっても、どんな時でも、その結果失敗しても自らの力で立ち向かえることを。 だからこそ投手は遊ぶ。 怖いもの知らずの頼もしい存在が後ろにいるからこそ、この瞬間を心置きなく──。 自分の生き方に恥じぬよう。 「そんじゃま、いっちょやりますか」 そう、まずは一つ。 笑って鼻歌でも歌ってみようか。image=485663473.jpg
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加