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投手はボールを受け取りすぐさま投げるモーションへと移る。そして初球と変わらない動きとスピードで指先から白球が放たれた。
同じ放物線、コース、球速。
(なめやがって)
それを待ち構える打者は両目でしっかりと捕らえ。
(ふざけてんのはどっちだ)
銀灰色のカーボンバットを最短の軌道で振り下ろす──さながら断頭台のギロチンのように。
「ストラィー、ツー!」
しかし、刑は執行されず快音が響くことはなかった。
先程と同様にパスリとミットに収まっていたのだ。
黄色い声援が僅かにどよめく。
あれほどヒットを製造していた打者がまさかの空振り、これには味方のベンチも、なによりバッターボックスに立っていた本人が一番不思議がっていた。
先の通り、初球は運頼りのヘロ球にすぎない。
しかし、二球目はそこに実力をかき混ぜていた。
(ストレート‥…いや変化球?)
リトルリーグでは成長期の肩に負担がかかるという理由で変化球は原則禁止とされている。そのため打者は主審に顔を向けたのだが、口は堅く閉ざし注意する気配は無い。
つまりは変化球じゃなかったのだ。
少なくとも審判はそう判断した。
打者が抱く微かな違和感。
だが、これを解決するにはあまりにも。
「ストラィースリー! バッターアウッ!」
時が足りない。
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