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どこに飛んで、どこに落ちるか。
大体の見当がついていた少女は既にグラウンドを駆け抜けていた。
身体が加速度を増し、目まぐるしく変わる景色を無視しながら、ただ一点だけに狙いを定める。
そして、射程距離に達した少女はこれでもかというぐらいに歯を食いしばり──己の足下を思い切り蹴りつけた。
ふわっと浮く身体。斜め上には群青に溶け込んだ少女の獲物。
高速で横切ろうとするそれだが、その瞬間だけは不思議と世界がスローモーションに見えた。
だからこそ気付いてしまったのだ。
(…‥あ、足りない)
空中で身をよじり つりそうなぐらいに伸ばした腕の先、それでも白球になんとか届くのはグローブの縁の部分だけという事実に…‥これでは重なったとしても勢いのままに弾かれてしまう。
ならばどうする。
ひどく難しいが、さながら菜箸で小豆を摘むように、もしくは縁日の金魚を流れのままポイに収めるかの如く技術的に勢いを殺すか。
「に、げんなコラァアアア!!」
後はもう…‥。
ゴリラ並の握力で力任せに捕獲するかだ。
どちらにせよ、諦めるという言葉は浮かんでこない。
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