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着地の事なんか微塵も考えておらず、強い衝撃とともに地面へと横滑りする。
土煙が周囲に舞う中で うつ伏せになった少女を、皆が固唾を呑んで見守っていた。
塁審が駆け寄って様子を伺う。
捕ったのか、落としたのか。
皆の興味はその一点に絞られる。
すると少女は真っ先に腕をかかげ、口に入った細かな砂利をぺっと吐き捨て堂々と立ち上がる。
自分の胸から下は物の見事に地面と同じ土色に染まっていて、伸ばしていた肘から少量の血が滲み滴り落ち、自身も擦り傷や土埃にまみれて、ひどい顔になっていた。
劇的なファインプレイに対し観客席は先程のピッチングを忘れたかのように敵味方問わず賞賛の嵐が鳴り止まない。
一人の選手として、ただ純粋に拍手喝采をその身に浴びる。
胸の高ぶりが治まらない。
なんたって混じり気無しの純度100%の勝利を自らの手でもぎ取ったのだ。
景気付けだと言わんばかりに、もう一度片手を空へと掲げた。
せっかく手に入れた居場所を、決してなくさないように────。
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