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「あやめは、卒業後どうするの?
まだ目標探し中?」
「うん。まだ見つからないんだよ」
あやめが少し俯いて、ふうと嘆息する。
「みんな、すごいよね」
あやめは顎の下に手を当てた。
「すごい?」
「だって、一緒に同じ授業を受けてさ、夕暮れまで遊んだりしていたんだよ。
急に進路とか、夢を見つけられちゃうなんて、びっくりだもん」
あやめは、ぷいと口を尖らせて、そのままこちらを向いた。
「まだ時間もあるし、じっくり考えればいいんじゃないかな」
「うん。でも嫌だよ、おいてけぼりは」
「僕が立派なカメラマンになったら、村に迎えに来るよ」
「何言ってるの。私だってちゃんと見つけるよ、目標っ」
両手をギュッと握り、また膨らんだあやめの頬は、さっき沈んだ夕陽のように赤味を帯びていた。
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