chapter1 かごめかごめ

4/29
前へ
/256ページ
次へ
「わっ、ちょっ、いきなり?」 あやめは、白い光に目を眩ませながら僕の行為を非難する。 「早くしないと夕陽が沈んじゃうよ。ほら、笑って」 非難の言葉などお構いなしに、僕は、もう1度シャッターを切った。 黒髪のショートボブに白い兎の髪止めを乗せた彼女の表情は、高校3年とは思えないあどけなさが残る。 「やっぱり意識すると固くなるね、表情」 「そんなレンズを向けられたら誰だって緊張するよ。ああっ。もう沈んじゃってるじゃない、夕陽」 丘から見える空の眺めは、もう橙色の帯しか見えなくなっていた。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1278人が本棚に入れています
本棚に追加