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息を切らせて走る。
ハルトの話だと俺(偽物)は頑張って走れば追いつく所にいそうだ。
「……」
どっちだ?
俺の前には分かれ道が。
片方は俺の家がある住宅街が。
もう片方は特に何も――あ。そういえばこの町で唯一観光として見れる場所があったな。
でも、“俺”の偽物なら俺の家に行く可能性の方が高いだろう。
わざわざ俺に化けておいてあんな場所に向かうのは考えにくい。
俺は選んだ。
それが、分かれ道だった。
「っと……かーさん!」
バタバタと家に入った俺に中にいた家族は少し驚いたようだった。
「どうかした?」
そこにいたのは女のように綺麗な長い白髪を揺らし、ふんわりと微笑む俺の自慢の親。
その姿はまるで天女のよう。
この人が偽物の俺と会って何かされてないかとても心配だ。
「っは、俺!」
「まぁまぁ一旦落ち着いて……落ち着いた?で、シュン君がどうしたの?」
ことん、と首を傾げて言った。
「いや、その……俺、来なかった?」
俺の言葉に少し考えるような素振りを見せる。
「うーん、どれくらい前だったかな……来たけど詳しくは覚えてない。それがどうかしたの?」
来たけど――覚えてない?
つまりついさっきとかじゃ無いのか?
「かーさん、俺が来ても絶っ対に扉開けちゃ駄目だよ!」
疑問符を浮かべているが、ちゃんと鍵を閉めたりしてくれたので、恐らく大丈夫だと思おう。
それに、もうすぐ兄さんが帰ってくる頃だ。
兄さんがいればとりあえずは何とかなるだろうと考えて外へ出た。
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