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俺の偽物は今さっきでなく随分前に家に訪れた。
と言うことはあの分かれ道で向こうに行ったのだろうか。それともこちらに来てうちじゃない何処かへ行っているのか。
……いや、今じゃないけどここへ来たんなら、市街地でのそいつの目的は終わっているかも知れない。
だからあのもう一つの道へ進んだ可能性の方が高そうだ。
俺は町外れに来ていた。
この町の数少ない名物、イメカナフ。
だだっ広い地にぽつぽつと何かがある。
歴史的にはかなりすごい物らしいが、俺達にはよく分からない。
「っは、はぁ……」
古びた雰囲気にぽつりと異質な黒があった。
――あれか!?
「おいっ!あん、た……」
俺の声でそいつは振り返った。
こっちを見て、目を開き、驚愕する姿に俺は驚いて。
俺だ。
そいつは俺だった。
ハルトやかーさんが気付かなかったのも頷ける。
そいつはどうしようもないくらい俺だ。
俺でさえ、俺なんじゃないかと疑ってしまう。
「――くろ、すしゅ、ん?」
俺は戦慄する!!
声や話し方まで一緒だ!
俺にここまでそっくりに化けれる奴が……
「なんで。」
声が重なった。
「――あれ?」
また、重なる。
少し違った。
ほんの少し声の高さが違う。
同時に話さなければ分からないような差違。
鏡のように全く同じ顔をしているはずの俺ら。
きっと今の状況を誰かが見たら、それはもう不気味だろう。
「……そうか、そういうことか。」
目の前に見える俺は何か納得したように言った。
「そ、そういう事って一体っ!?」
と、俺が言った瞬間。
大きな縦揺れが起こる。
来たかと言って、俺じゃない俺はイメカナフの中央辺りへ走っていく。
「ちょっ待てよ!」
立ち上がれないほどの大きな揺れの中、物ともせずにしているその人に驚きながらも、這いつくばり前へ進む。
「――。」
耳鳴りもしてきた……
何なんだよ、これ。
全部こいつの仕業なのか?
「何で、俺なんだよ……」
地面の揺れが浮遊感に変わる。
ふいに彼は振り返って俺に微笑みかけ言った。
『ごめん、――――――。』
口の動きからはそれだけしか分からなかった。
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