13人が本棚に入れています
本棚に追加
目を覚まし飛び込んできたのは、狭く見覚えがない場所だった
僕の意志に反して動くその部屋には、窓がついており景色を次々と変えていく
僕はそれを一瞬でも見逃さないよう見つめていた
「おや、起きたようだね。気分はどうだい?」
低い男の人の声が聞こえた
見ると、自分がいる部屋を窓枠で隔てたような所にその人はいた
前を向いていて顔はわからない
「あ……」
自分の状況が把握出来ていないため、間の抜けた声だけが出る
「ああ、悪かったね。いきなり話を進めるのは私の悪い癖だ…。」
ハハ、と小さく笑う
「さて、今まで君は孤児院にいたわけだが、これより私が引き取ることになった。…つまり、君は私たちの新しい家族となるのだ。」
淡々と、諭すように話す彼の言葉に、胸が弾むと同時に、
本当にあの孤児院から抜け出せたのか…?という
疑問に駆られる
「……まぁ、状況がまだ整理できていないと思うが、話すとこんなものだ。あとは、私の屋敷での生活に時間をかけて慣れていけばいい。」
「えっと…ということは、この部屋はあなたの屋敷へ向かっているということですか……?」
恐る恐る訪ねる
「ああ、そうだとも。ちなみに、これは部屋ではなく『馬車』という乗り物だ。そして私の前を走っているのが、これを動かす原動力となる馬だ。」
……これが人や荷物を運ぶ乗り物
しかも、この『馬車』と呼ばれるものは動物が動かしているのか
あの孤児院から出ていなければ、知りもしなかっただろうな……
「そろそろ、屋敷に着くぞ」
外を見ると、さっきまでは賑やかな街のなかだったはずなのに、既に辺りは閑静な森の中だった
車輪のガラガラという心地いい音も小さくなっていく
最初のコメントを投稿しよう!