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「さぁ、ここが君の新しく住む所だ」
脇にあるドアを開けられ、馬車から外へと飛び出した
……綺麗だ
その一言に尽きる
ザワザワと背丈の高い木々が萌える中に建つそれは、以前童話の挿し絵で見たことがある洋館のようで
なんだかすごく神々しいものに思えた
僕がその場で立ちすくんしていると、隣からクス、と笑う声が聞こえた
「失敬、君が余りにもキラキラとした瞳で見つめていたものでね」
声の方向を見ると、これまた驚いた
声の調子や話し方からしてそれなりの年齢だと思っていた主人は、とても若く、なにより殊更に美しい人だったから
白い肌に、長い睫が女性的ともとれる端正な顔、腰まである長く綺麗な銀髪は後ろで結われている
そして身に纏った黒の上質なスーツは、白い印象のその人のアクセントとなり、非常に似合っていた
「…?なんだ、君は人や物をじっと見る癖でもあるのかい?」
「い、いえっ!」
見つめていたことに気づき、少し顔を赤くして首を横に振る
「申し遅れたな。私はシュバルツという者だ。ここでは、研究をして過ごしている。まぁ…孤独な科学者というところか。今後とも宜しく。」
微笑みを浮かべると、手を差し伸べてくる
「宜しくお願い致します…!」
僕は彼の言葉に少し違和感を覚えたが、これからの期待を胸に気合いを入れて挨拶をし、シュバルツの白い手を握った
「あっ、えっと僕は……」
「あれ…?僕の名前……」
名を名乗ろうとするが、何故か出てこなくなってさまう
「…わからないようなら、君の名前は後で私が付けることにしよう。」
そう言うと、屋敷の正面にある大きなドアを開け、僕を出迎えた
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