story.1 その瞳は

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 エレベーターをおりて、自室である社長室に入って 「ハァ……」  ソファーにグッタリと腰掛けた。重力に押し付けられてソファーに、めり込んでいきそうだ。 ――そういえば……  あの啜り泣きは、聞き間違えだったんだろうか。  背もたれから重たい上半身を起こして、垂直にいられず前屈みになる。 「……幽霊……? ……っ」  自分で口にしておいて、身震いする身体。  聞き間違えだろ? そうだ、聞き間違えだ……ああ。  そう言い聞かせて、パソコン画面に向かった。 「……メール」  開いた画面に、メールが届いている。クリックすると、――斗真の会社。  なんだ?  そんな思いもありながら、少し胸が期待を込めた音を鳴らす。 「……っ」  やっぱり。――紗英だ。  斗真の会社からのメールは、いつも紗英なんだ。名前はないけれど、文章の作り方からして紗英だとわかる。
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