story.1 その瞳は

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「――!?」  それは急だった。急に視界に映って、でもそれから視線を逸らす事無く追った。 ――それは、紗英。  間違える訳はない。 「おい!」 「はっはい!!!」  視線を後ろに向けたまま運転手に叫ぶと、怯えたような返事が聞こえる。 ――車をとめろ。  そう出てくる筈が出てこなくて、車は行き場を失い車道の脇にとまった。  あれは、紗英だ。だが、紗英の前に出て何をする?  「あのぉー……」  控えめな声が聞こえて、我に返る。  一体、俺は何を考えているんだ……呼び止めたって、何もできやしないのに。 「すまない。出してくれ」 「……はい」  運転手にそう言って、「ハァ……」と溜め息を吐きながら、後部座席に座り直した。  本当に、……哀れだな俺。 ――だが……なんだ?  この言い知れぬ不安感は。喧嘩でもしたのだろうか。  車が動き出して  キラキラと色鮮やかな街並みが瞳に映る中、――紗英の瞳が気になった。  その瞳は、――悲しみに溢れたような辛そうな瞳。  いつまでも脳裏に付いてまわった――――……。
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