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「どうかしたのか?」
「……あ、いや。
このプランで通す。また細かい事は連絡する」
首を傾げる斗真にそう言って立ち上がった。
――いない……のか。
今日の打合せ……は実際、――俺じゃなくてもいんだ。社員でも。
だけど、俺社長自ら出向いてきてる。
その訳は、――紗英。
お茶出しや斗真の補佐をする紗英に、会うため。
だが、悔しいんだ……。
アイツは、――動揺しない。俺がここに来ても全くと言っていい程動揺しない。
俺は動揺してるというのに。
――紗英はもう
俺なんかに意識の“い”すら持っていない。
そりゃ、そうか……。斗真と、――結婚してんだもんな。
それにしたって、いつもいる筈の人間がいないのは
おかしいじゃないか。
「じゃぁ、また」
「ああ」
思ったが。
聞けるわけもなく、俺は斗真の社長室から出た。
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