story.1 その瞳は

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「どうかしたのか?」 「……あ、いや。  このプランで通す。また細かい事は連絡する」  首を傾げる斗真にそう言って立ち上がった。 ――いない……のか。  今日の打合せ……は実際、――俺じゃなくてもいんだ。社員でも。  だけど、俺社長自ら出向いてきてる。  その訳は、――紗英。  お茶出しや斗真の補佐をする紗英に、会うため。  だが、悔しいんだ……。  アイツは、――動揺しない。俺がここに来ても全くと言っていい程動揺しない。  俺は動揺してるというのに。 ――紗英はもう  俺なんかに意識の“い”すら持っていない。  そりゃ、そうか……。斗真と、――結婚してんだもんな。  それにしたって、いつもいる筈の人間がいないのは  おかしいじゃないか。 「じゃぁ、また」 「ああ」  思ったが。  聞けるわけもなく、俺は斗真の社長室から出た。
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