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「ちょ……片桐さん、勘違いしてません?」
見た目の冷静さとは裏腹に、中身で黒く渦巻く俺の心。
そんな俺の中身なんてお見通しのような、想定していたような冷静な口調。
その態度が、渦巻く速さを加速させていく。
コイツは……置いとけない。勘違いもなにもない。
「出ていけ」
腹の底から出た声が、自分の声とは思えないくらい低くて、
でも、ぐちゃぐちゃの頭で今は何も考えられなくて
ただ、
「片桐さん、聞い──」
「出てけっつってんだろ!!!」
悠の顔を今は見ていられない。
これ以上は、──無理だ。
「……わかりました」
「…………」
様々なコトに協力し紗英を守ってくれた悠を
これ以上疑いたくない……。
「いいんすか?」
「…………」
復活したのか
真剣な表情を浮かべてそう言う矢崎を瞳に映して
事務所の入り口を出てていく悠の背中を
黙って見送った。
「…………」
悠、オマエは何の為に俺の前に現れたんだ…………。
それを知った時
また俺は────。
「ちょっと早すぎだったんじゃないんすか?」
「だって、早く────」
俺の知らない場所で
確実に
────進行
そう、何かが進行しているコトなんて、知る由もない。
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