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「ちょっと広瀬これ頼む」
「はい」
ガタガタザワザワ
機械音に電子音に鳴り響く事務所。
──妙に機械音が増したのに気づきながら
テーブルにお茶を出す。
「悪いね、忙しいのに」
「いえ」
パーテンションを挟んだ向かい側から慌ただしさが伝わる中、社長が口を開いた。
「片桐君、すまなかった」
「──!?」
……は……?
鮮明に蘇る悔しさ
悲しさ
苦痛も恥も捨てて出向いたモデル事務所の社長
────何を今更。
斗真の言葉だけを信じて、俺の話すら……会うことすら避けていたというのに、なんなんだ?
後頭部しか見えない社長に
罵声を浴びせようとする自分を、なんとか抑えて
「社長、頭をあげて下さい」
「しかし……」
「あげて下さい」
「……わかった」
下げている頭を、上げるよう促した。
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