story7.幸か不幸か

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「ちょっと広瀬これ頼む」 「はい」 ガタガタザワザワ 機械音に電子音に鳴り響く事務所。 ──妙に機械音が増したのに気づきながら テーブルにお茶を出す。 「悪いね、忙しいのに」 「いえ」 パーテンションを挟んだ向かい側から慌ただしさが伝わる中、社長が口を開いた。 「片桐君、すまなかった」 「──!?」 ……は……? 鮮明に蘇る悔しさ 悲しさ 苦痛も恥も捨てて出向いたモデル事務所の社長 ────何を今更。 斗真の言葉だけを信じて、俺の話すら……会うことすら避けていたというのに、なんなんだ? 後頭部しか見えない社長に 罵声を浴びせようとする自分を、なんとか抑えて 「社長、頭をあげて下さい」 「しかし……」 「あげて下さい」 「……わかった」 下げている頭を、上げるよう促した。
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