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――ふと思い出す。
『未練など、もうない。ただ、姿を見たい声を聞きたいだけだ』……と言ったら
姉貴に、――それが未練だというんだ、と殴られた。
「ハァ……」
斗真の社長室を出て左側から見える景色は最高なのに、溜め息が出て顔を上げているのも
――面倒だと感じる。
哀れに未練に次は……嫉妬でもするか?
ああ。馬鹿馬鹿しい。
もう戻ってきやしないのに、そんな事を考えるなんて
――まさに、哀れだ。
1度自宅に帰ろう。
朝の残骸を思い出すと、虫が這う想像が出てくる。
身震いをしながら、エレベーター付近まできて
……ん?
なんとなく、左側にある扉が気になった。誰か、――泣いてるような。
扉付近で足を止めてみるけれど、聞こえず首を捻った。
「――気のせい、か?」
給湯室と書かれたプレートを流し見て、エレベーターのボタンを押し
そのまま、降りた。
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