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社長が帰り、事務所内が社長の来る前よりも落ち着いている。
慌ただしさと忙しさの渦が巻いていたのが、嘘のようだ。
「いつから気づいてたんだ?」
デスクに頬杖をついて、パソコンキーを叩く広瀬に訊ねると、広瀬は指を止めて
口を開いた。
「結構前ですね……、じゃないと間に合わなかったですよ。
──悠にかん──!」
「……悠?」
悠になんなんだ?
マズイ、というような表情を浮かべる広瀬、それを見て矢崎が額に片手をあてる。
「広瀬」
「……はい」
どういう事だ?
頬杖を外して、真っ直ぐ広瀬に視線を向けると、
フーっ、と溜め息を漏らした。
「話します、話しますからそのコワイ目、止めてもらえます?」
「……あ、ああ」
そんなコワイ目、してるか?
なんて思いながら返事をしたけれど、どんな表情をしたらいいかわからなかった。
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