story7.幸か不幸か

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社長が帰り、事務所内が社長の来る前よりも落ち着いている。 慌ただしさと忙しさの渦が巻いていたのが、嘘のようだ。 「いつから気づいてたんだ?」 デスクに頬杖をついて、パソコンキーを叩く広瀬に訊ねると、広瀬は指を止めて 口を開いた。 「結構前ですね……、じゃないと間に合わなかったですよ。 ──悠にかん──!」 「……悠?」 悠になんなんだ? マズイ、というような表情を浮かべる広瀬、それを見て矢崎が額に片手をあてる。 「広瀬」 「……はい」 どういう事だ? 頬杖を外して、真っ直ぐ広瀬に視線を向けると、 フーっ、と溜め息を漏らした。 「話します、話しますからそのコワイ目、止めてもらえます?」 「……あ、ああ」 そんなコワイ目、してるか? なんて思いながら返事をしたけれど、どんな表情をしたらいいかわからなかった。
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