story.1 その瞳は

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 斗真の会社は今、俺の会社の上をいく。抜かされた。 ――紗英のデザイナー力は、ハンパないのだ。  親父でさえ手も足もでない。  まぁ……仕方ない。  それを維持していけるよう、案を練っていけばいい。 ――敵に回さぬように。  敵に回せば、暗闇に突き落とされる。どん底だ。  それにしたって斗真は、何も言わない。俺が直々に会社に来なくてもいいような案件でも、俺が出向く  だが、――何も言わない。  元恋人で元夫婦だ。俺を紗英に会わしたくないとは  思わないのだろうか……。 「ハァ……」  自宅に辿り着いて  変わりない悲惨な状態のリビングを目の当たりにして、口元を覆って溜め息が出る。  一体今日、何度溜め息は出てくるつもりだ。  そんな事を思いながら、リビングの空き缶やらをビニール袋にまとめた。
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