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アカデミーに到着した。
セリカが最後にアカデミーに来たときから、何も変わっていなかった。校門も、校舎の佇まいも、そこに流れる空気も、すべてあのときのままだった。随分と久しぶりのような気がしたが、まだ数ヶ月である。変わっていなくても当然だろう。懐かしさからか、いたたまれなさからか、胸がギュッと締め付けられるのを感じた。
校舎はしんと静まり返っている。どうやら授業中のようだ。
セリカはほっと胸を撫で下ろした。今のうちなら誰にも会わずにすむ。急いで配達を済ませようと足を速めた。だが--。
--キーンコーン。
校舎に足を踏み入れた途端、チャイムが鳴った。すぐにガヤガヤとあたりが騒がしくなる。
--なんてついてないの?!
セリカは心の中で舌打ちし、自分の運のなさを呪った。だが、今さら引き返すわけにもいかない。誰にも見つからないことを祈りながら、顔を伏せ、帽子のつばを深く引き下ろし、配達先である学長室へ向かった。
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