一章 幼なじみ

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クライシス学園を出るまでに聞いた陰口を全てウィンが制す。 「睨みきかせなくてもいいって、いつも言ってるだろ」 聞こえてくる陰口には傷付くが、それを一々気にしていても身が保たない。 そもそもこの陰口の原因は幼なじみの3人である。 「ヤッ………!」 ヤッじゃないよ。 「………カサイ」 眠たそうな目つきで俺を見上げ、小さな口から奏でられた1人の名前。 「んー」 カサイというのは両親がつけた俺の名前。 「……おうち、行って、も……い、い……?」 「いいよ」 久しぶりにウィンが家に来るのか。 何しに来るの?家になんもありませんよ。 「………ごはん」 俺の料理目的かよ。 確かに一人暮らしでそこそこ作れるが、貴族の娘であるウィンのお抱えシェフの方が遙かに美味い。 これは謙遜でもないし、ただの事実と言えよう。 上等な食材に、腕利きのシェフが作った料理は一般庶民が、一生に一度あるかないかのもので、あまりの美味さに感動した。
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