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以蔵は酷く怯えていた。
連日連夜続く、地獄のような拷問で、手も足も機能はしないが、意思とは関係なく激しく小刻みに身体が動く振動は止まらない。
度重なるストレスで身体全体の神経が異常をきたし、筋肉が痙攣を起こしているのだ。
喉が渇いた……。
以蔵は己の血で濡れた床を舌で舐めた。
もう味すら感じない。
この男、歳は二八。
京都の町において、知らぬ者などいないというほど名の知れた人斬りであった。
名を岡田以蔵。
つい今日まで連続殺人鬼として日ノ本中を怖れさせ、震え上がらせ、人外の狂人とまで呼ばれた男である。
その男が、捕縛されると今では拷問に耐え切れず己の犯した罪を全て自白し、生気が抜け、痩せこけ、ただ怯えていた。
「嫌だ……なぜアシは、死なぬとならぬのだ。…死にとうない」
小さく呟いた。
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