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喧騒。
耳を覆いたくなるような喚声、野次、怒号が辺り一面に飛び交う。
醜い世界の、片鱗――。
広場の中心でどよめきが起こった。
敷き詰められた石は踏み均され、じっと事の行く末を見守っている。
異変は取り囲む全ての人々の間をさざ波のように広がり、すぐにまた何人かが叫び始めた。
ある国の、ある都市の真ん中。
大きな街の奥にはこの国を統治する城が聳え立っている。
その眼前で、事は起こった。
――思想と思想がぶつかり合い、人と人がぶつかり合う諍いだった。
連日朝から晩まで声を上げ続けて行われていた諍いが、その瞬間止まった。
静けさが支配した刹那、中心にいた数人が声を張り上げる。
だが再び生まれた取り巻く様々な人間の声と騒音で、最早誰も彼らの言葉を最後まで聞き取れずにいた。
「――我々は今日この日を以ってこの国と袂を別つ!この国が尽きる時、再び此処へ現れるであろう――」
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