ラディスの泥棒

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「噂には聞いてたけど、こんなおっかないんだな、主付きって」  遥が鏡に聞かれてはいないかとそわそわしている。 「ここで肝心なのがそのトレゾールだ」  古宮がびっと懐中時計を指した。 「アリスの持つトレゾールはとんでもなく強力な代物とされている。だがその能力は誰も知らない。勿論、アリスの存在自体が霧がかった伝承話に過ぎなかったからだ」 「じゃあ、この時計の能力って」 「確かではないが……おそらく、『トレゾールの主と対話出来る』」 「凄い!」 「そう……なのかな」  遥は感嘆したがカヨにはよく分からない。 「ラディスでも言ったが、それは常に閉じて隠しておけよ」  古宮が釘を刺し、カヨは素直に懐中時計を元の制服の下に仕舞った。 「そういえば、遥と古宮さんは何処へ行っていたんですか?」  鏡に飲み込まれた後、どうなったのだろう?  二人は顔を見合わせた。 「まぁものの見事に」 「?」 「「何も無かった」」
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