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ガキンッ
「はぁッ!」
「うっ」
数分前。
騎士の刀が振り下ろされた瞬間、遥は即座に手を床につき身を屈め、そのまま騎士のこめかみに蹴りを入れた。
慣れているかの様な、洗練された動きだった。
騎士は刀を手放し、ガシャンッと音を立て、仰向けに倒れた。
「あいつ直伝の蹴りだ。
手加減したからまだ意識あるだろ、カヨの居場所を教えろ」
「う…」
渋々口を割った騎士からカヨの居場所を聞き出すと、遥は数秒で気を失った騎士を残して走って行った。
急におかしくなって遥は笑い出した。
「…何だそれ…有り得ないだろ…」
この手が届くまで、あと少しだった。
訳が分からなくなるほど色々な感情がぐちゃぐちゃと渦巻く。
あの城主がカヨを殺した。
それは分かってる。
じゃあこの怒りは、どうしようもなく自分を襲う怒りは何だ?
扉の向こうの景色がぐにゃりと歪んだ。
(カヨ…)
「うあああああああーーっ!!!!」
掠れたような慟哭が、部屋一杯に響いた。
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