アルバイト

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―― 「あぁ、郁未帰ってたの?お帰り」 「うん、ただいま」 階段上りたくなくて、飲み物を飲みながら共同リビングのソファに座ってTVを見ていた俺に涼峰が話かけてきた。 此処に住むようになって1週間とちょっと。誰かに「ただいま」とか「おはよう」とか言うのに大分慣れてきた。初めは少し照れくさかったけど。 「どーだった?蔵馬さん。変な人だったでしょ」 「変って知ってたなら先に教えろよ。お前よりよく分かんない人だった」 「それは、僕のことも馬鹿にしてるのか。それとも、僕のことはマシって言ってるのか」 「だってお前も変人じゃん」 「そうか。それもそうだ」 それで納得して良いのか。まぁ、本人が良いなら良いか。 「でも、悪い人じゃなかったでしょ?郁未みたいなタイプは、ああいう人の方が気が合うと思ったんだけど」 「あぁ、うん。まだよくわかんねぇけど、嫌いじゃねぇわ」 「なら良かった。ついでに郁未みたいなタイプは僕みたいな人と気が合うと思わ」 「ない」 涼峰の言葉を遮って否定する。合ってたまるか。しかし、懲りない涼峰。 「出会って1週間でこんなに仲良かったら気が合うって言うと思わ」 「ない」 また涼峰の言葉を遮って否定する。涼峰は少々いじけ気味だ。 「そこまで否定しなくても……あっ!!」 「なんだよ」 急に大声をあげたと思えば、しまった!というような顔をしだしてブツブツと何か言い出した。 「これ、僕、自分でライバル増やしちゃったんじゃ……!いや、大丈夫。大丈夫なはずだ。蔵馬さんまで、まさかそんな……」 「なに言ってんの?」 「いや、なんでもないよ。……夕飯のおかず買うついでに確認してこよう。じゃあ、郁未。僕、買い物行ってくるから!」 「え、おぉ。いってらっしゃい」 「……っ!いってくる」 満面の笑みで出掛けて行きやがったけど、1人で百面相して大丈夫かあいつ。 まぁ、いいや。今日、夕飯なんだろ、なんか作るなら手伝おうかな。 帰ってきた涼峰の買い物袋の中には虫の唐揚げがあったので、涼峰の顔面に思いきり投げつけておいた。 なんでよりによってこれを買ってきたんだよ、こいつ。
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