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翌日…保健室では何故か、蛍を間に挟み、右に仁志、左には哲が陣取っていた…
(授業中ですよ?)
ドス黒いオーラを撒き散らす二人に、気の弱い蛍が意見出来る筈は無く…
(あ…何だか、気が遠くなって…)
大の大人を睨み倒せる程の凄まじい気迫の持ち主である武人二人に挟まれ、只でさえ虚弱体質である者が、そのプレッシャーに長時間耐えられる筈もなく…
蛍は不意に意識を失い、机に突っ伏してしまった…
「ヒナ!大丈夫か?…気絶しちまったか…」
机に顔面がぶつかる寸前、哲が左手を差し出して身体を支えた。
「俺達のプレッシャーに耐えられる者なんて、ザラにはいません」
「可哀想な事をしちまったな…」
小さな身体を軽々と抱え上げ、ベットへと寝かせた。
布団を掛け右手で済まなそうに頭を撫でる師へ、仁志は容赦ない言葉を掛ける。
「不毛な争いは止めにして、ヒナを俺に下さい」
ストレートに言う弟子へ、哲もストレートに返す。
「ヤなこった」
「おっとり屋のヒナには、師匠の気持ちは全く伝わってませんよ」
「…分かってるさ…」
分かっている、と応える哲の手は、蛍の頭から離れない。
その手を仁志は右手で掴み、外させた。
弟子の唐突な行動に哲は驚き、相手の顔を見る、と…
黒曜石の瞳に怒りを燃やし、仁志は己が師を睨みつけていた…
「何を、“分かって”る?
どれ程、ヒナが悩んだ事か…
“教師と生徒”の恋愛は…世間の批判が、あなたへ向くのだと…
だから…『あなたを想っている』の、一言をヒナは言えない…」
「だから、『諦めろ』か?」
「はい」
「断る」
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